《十二か月推事記》

フジコです。推しのことについて。

尾形光琳の燕子花図-寿ぎの江戸絵画-

フジコです。

平成最後平成最後うるせーぞと思われるかもしれませんが、GW三日目、平成最後の美術館を決めてきました。

 

GW三日目はこちら↓

 

東京・表参道  根津美術館

尾形光琳の燕子花図-寿ぎの江戸絵画-」

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根津美術館は、実業家根津嘉一郎のコレクションを保存・展示するために設立され、日本・東洋の幅広いジャンルの古美術品が所蔵されています。

 

7000点を超える所蔵品のうち、7点は国宝で、中でもこの美術館を象徴する存在とも言えるのは、尾形光琳《燕子花図屏風》。

毎年4月中頃から5月上旬まで、庭園の燕子花開花に合わせて公開し、琳派光琳と同時代の作品と共に鑑賞することができます。

 

こちらが燕子花。

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半分程度は蕾だったので、見頃はまだ続きそうです。GWということで、普段は来ていないような若い人や親子連れが多かったですね。

ちなみに去年は開花1輪目を見てきました。ちょこんと。

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外国の方も多いので、英語の案内も出されているのですが、燕子花を表す英語は「Iris」だそうです。

ところが、「Iris」とはアヤメ属の植物全般を指す総称。アヤメもカキツバタハナショウブも、英語では全部同じになってしまうのです。もちろん植物学者レベルになればきちんと分ける表現があるのかもしれませんが、アヤメとカキツバタハナショウブは別物だとわかっている日本人からすれば、「Iris」でくくってしまうのは、どうもしっくりこない表現であるような気がします。

 

明確な違いを述べることはできずとも、三者は別物であると認識している日本人はそれなりに多いでしょう。

さらにカキツバタは漢字も二通りあり、「杜若」「燕子花」と表記されます。

光琳カキツバタは、「燕子花」なのです。明確な理由はと聞かれたら答えられないのですが、「杜若」ではなく、「燕子花」なのです。なんでしょうね。漢字だけでも印象はガラッと変わるものです。

 

お雇い外国人エドワード・モースは、当時米国の植物学者レベルの知識を、日本人の学生たちが自然と身につけているのを大変驚いたとの記録を残しています。

植物のわずかな違いを見分け、それぞれに名付ける。また更には漢字表記にまで気を配る。ここに日本人の草花への眼差しが、色濃く現れていると感じます。

 

 

さて、サブタイトル「-寿ぎの江戸絵画-」とあるように、今年は喜ばしい出来事、風俗を描いた江戸絵画が、《燕子花図屏風》を囲む作品として選ばれています。

(ちなみに、昨年は光琳の弟乾山の作品、その前の年は奇想の系譜展にも登場した鈴木其一《夏秋渓流図屏風》が選ばれています。来年あたり抱一が来るかもしれない…)

 

この「寿ぎ」という言葉、文字通りげにおめでたい言葉なのですが、「言祝ぎ」とも表されます。むしろ後者がメジャーかもしれませんし、こちらの方が意味がわかりやすいですね。「言葉によって祝福すること」という意味です。

 

本日、天皇陛下が退位礼正殿の儀に望まれ、最後のおことばを述べられました。これこそまさに、新しい時代を迎える日本への言葉による祝い、「言祝ぎ」ではないでしょうか。

 

平成の終わりと令和の始まりにふさわしい展覧会でした。これからの時代もずっと、国の美しい宝が守り伝えられていきますように。